
大阪市の特区民泊(国家戦略特区民泊)は、ここ数年で大きく広がり、いま大きな転換点を迎えています。特区民泊とは、国家戦略特区という仕組みを使って認められている民泊制度のことで、通常の「住宅宿泊事業法」(いわゆる民泊新法)よりも柔軟な運営が可能です。特に魅力的だったのは、営業日数の上限がなく、年間を通じて運営できる点です。
当初は「6泊7日以上」という宿泊条件がありましたが、現在では「2泊3日」から利用可能となり、旅行者にとってぐっと使いやすくなりました。その結果、全国にある特区民泊施設の9割以上が大阪市に集中しており、大阪観光の盛り上がりを支える存在になっています。
しかし一方で、人気の高まりに伴って騒音やごみ出しルール違反、夜間の迷惑行為など、地域住民とのトラブルも増えてきました。こうした課題を受けて、大阪市は2025年7月に制度の見直し会議を立ち上げ、さらに同年9月には「新規申請を近い将来停止する方向で調整している」と報じられています。すぐに止まるわけではなく周知期間を置く予定ですが、2026年半ばには新規申請ができなくなる可能性が高いとされています。これから始めたい人にとっては、まさに“最後のチャンス”とも言える時期に差しかかっているのです。
これから民泊を始める人に考えられる3つの道
① 今のうちに特区民泊で申請する
まだ停止が確定したわけではありません。したがって、早めに申請しておくという選択肢もあります。ただし、現在は市が不適切な運営者に厳しい姿勢を取っており、書類の不備や近隣説明の不足は致命的です。単に「許可を取ること」ではなく、「安心して続けられる運営」を証明する意識が求められます。
② 民泊新法(年間180日まで)を使う
営業できるのは年間180日までと制限がありますが、運営の仕方次第で十分に成り立ちます。例えば繁忙期は料金を高めに設定し、閑散期は1か月単位の長期滞在プランを用意するなど、工夫すれば収益の安定化が可能です。
③ 旅館業(簡易宿所)に切り替える
費用や基準は厳しくなりますが、制度変更の影響を受けにくく、長期的な安定が見込めます。初期投資が増える分、将来の安心感を優先したい人に向いています。
初心者でも押さえたい運営のポイント
民泊を始める際に見落としがちなポイントを、初心者向けに整理しました。
・ 近隣への説明:単なる書面ではなく、住民に直接伝えて信頼を得ることが大切です。ごみ出しのルールや夜間の静粛時間、緊急時の連絡先などをきちんと説明しておくとトラブルを減らせます。
・ ハウスルールの徹底:室内掲示やチェックイン時の説明で「静かに過ごす」「ごみを分別する」といったルールを明確化。騒音検知器やごみ分別ガイドを導入すると効果的です。
・ 24時間対応の仕組み:夜間トラブルには、外部のコールセンターと現地駆け付けの二重体制を整えると安心です。苦情受付から解決までの流れを決めておきましょう。
・ 清掃と衛生管理:清掃手順をマニュアル化し、品質をチェックリストで管理。ごみ置き場の鍵管理や回収日のスケジュール徹底も欠かせません。
・ 法規制の確認:建築基準法や消防法を満たしているかを早めに確認し、必要なら事業計画を修正しましょう。
・ 集客戦略:予約サイトに頼るだけでなく、自社サイトや直販で「ルールを守る顧客」を取り込むと運営が安定します。
「地域に喜ばれる民泊」を目指しましょう
かつての特区民泊は「稼ぎやすい制度」として注目されました。しかしこれからは、「選ばれる運営」「地域に受け入れられる民泊」でなければ生き残れません。制度が変わっても続けられるのは、近隣と信頼関係を築き、トラブルを出さない工夫をした物件だけです。
大阪でこれから民泊を始めるなら、「静かで安心して泊まれる宿」を目指すことが最も大切です。短期的に稼ぐよりも、地域と共存しながら長く続けられる運営こそが、これからの“勝ち方”だと言えます。