
ここ数年、旅行のスタイルが多様化し、ホテルだけでなく「民泊」も一般的な宿泊手段として広まってきました。日本でもAirbnbが2014年に本格参入して以降、「空き部屋を旅行者に貸す」というスタイルの民泊が一気に増加しました。
ただ、急増する一方で「ゴミ出しのマナーが悪い」「騒音がうるさい」といった近隣トラブルが増えたのも事実。そこで、国は民泊をルールのもとで健全に広げていくために、2017年に「住宅宿泊事業法」、いわゆる“民泊新法”を制定しました。
この法律により、従来はホテルや旅館を建てられなかった住宅地でも、一定の条件を満たせば合法的に宿泊ビジネスができるようになりました(ただし、自治体によっては条例で制限されることもあります)。
〇民泊新法にもとづく民泊の種類と運営スタイル
民泊新法の特徴のひとつが「年間180日以内」という宿泊提供日数の制限です。つまり、1年のうち半分しか民泊として使えません。
また、運営スタイルには次の2種類があります:
1. 家主居住型
家主自身がその家に住んでいて、一部の部屋を民泊として貸し出す形です。運営に必要な対応(衛生管理や騒音の説明、苦情対応など)は家主自身が行います。
2. 家主不在型
家主が住んでいない場合です。このケースでは24時間体制で対応できる体制が必要であり、必ず「住宅宿泊管理業者」に管理をすべて委託しなければなりません。部分的な委託では認められない点に注意が必要です。
〇実際の民泊の数は?全国と大阪の動き
民泊新法の施行後、全国の民泊届出数は増加しましたが、2020年のコロナ禍で一時的に廃止件数が急増。その後は徐々に回復し、2023年秋ごろにはコロナ前の水準に戻りつつあります。
一方、大阪市の民泊は少し遅れ気味。2019年10月には2,677件あった届出住宅数が、2023年9月には1,595件にとどまっています。
しかし、2025年の大阪・関西万博によって観光客の増加が見込まれる今、再び民泊の需要が高まると予想されます。ホテルの開業ラッシュは続いていますが、それだけでは全ての旅行者を受け入れきれない可能性もあり、民泊の存在はますます重要になるでしょう。
〇民泊を始めるには、どんな義務がある?
民泊新法に基づく住宅宿泊事業者には、以下のような義務が課せられています:
・宿泊者の衛生・安全対策
・騒音などへの注意喚起
・宿泊者名簿の作成・保存
・標識の掲示
・苦情対応
・年間の提供日数の報告 など
「家主居住型」の事業者は、上記の内容を自らが義務事項を行い、「家主不在型」の事業者は、住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。